愛しの“らもさん”「今夜、すべてのバーで」

P1000753渋谷の劇場に勤める“飲み友だち”の、Kさんにもらった一冊が、らもさんとの出会いだった。『今夜、すべてのバーで』その本のタイトルが、“酒好き”(これは誉めことばだと思っている)を彼女に認められたようで、妙に嬉しかった。・・・ところで、中島らもって、小説も書くんだ。ふ~ん、と読み始めた。なのに、あっという間に“らもワールド”引き込まれた。

アル中で(正確には肝硬変)入院した経験を基に描かれた“酔いどれ”小説。客観的に自分の症状を眺めたり、飲まずにいられない理不尽を嘆いたり、諦めたり。しかし、その飲み方が凄い。入院を宣告された直後、最後の一杯としてワンカップ2本だぁ?入院した病院の霊安室でエチルを飲むだぁ?おい、おい。なのに、悲惨な気持にならない。爽快ですらあるのだ。

中島らもという名前は、知っていたし、気になる存在だった。彼が主催していた「リリパット・アーミー」という劇団の芝居は一度観てみたいと思っていた。また、「ぴあ」と「プレイガイドジャーナル」に連載されていた「微笑家族」というタイトルの4コママンガも、私の“好奇心センサー”を刺激していた。“カネテツデリカフーズ”の1PモノのCMだったのだが、商品とは全く関係なく、“てっちゃん”と“おとうさん”が登場し、シュールな会話を発し、なんとなく終わる。う~ん、さすがカネテツ、“関西魂”溢れる会社やなぁ・・・と。

そして、妻を巻き込んで、リリパの芝居を観るようになり、らもさんの著作を読み漁った。さらには、芋ヅル式にわかぎえふの著作を読み、「ラックシステム」「アガペーストア」「G2」と、蠱惑的な秘境都市“NANIWA”に迷い込んでしまうことになった。実は過去にも一度、関西系芝居に染まりかけたことがあった。かつての同僚であり、今は主にRUPで演出をしている岡村俊一くんの影響で、筧利夫、池田成志らが出演する(主に“つかこうへい”)芝居を観ることが増えた。が、「劇団☆新感線」を経て、還ってきた。・・・関西の“濃さ”に心からは馴染むことができなかった。全てを照らして影ができない芝居が苦手だった。関西の“おちゃめさん”たちの元気さ加減についていけなかった。

それに比べ、らもさんはNANIWAのおばちゃんオヤジだった。それが、東京のおばちゃんオヤジの私にフィットした。ステージでボンヤリと佇んでいるだけで魅力的だった。実に、愛すべき存在だった。憧れてさえいた。・・・あの世でも、酔いどれてるんだろうなぁ。

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